〜〜「立方体」の設計図〜〜



#1    箱の「中」から、立方体の「面」へ



「のっけから驚かされた!予想が次々に裏切られた!思いっきり騙された!」
4日昼・初めてのアンケートにはこう書くのが精一杯。もちろん最高のホメ言葉。
ようやく落ち着いて観られたのは、私にとって2回目の、5日昼公演になる。

この日も、本当に突然、二人の男は現れた。色にこだわったという手染めの衣装は、ごくシンプルなデザインで、濃紺と薄い黒の中間色。そして足下は裸足。

詩人にとって、題名と書き出しの一行が重要なように、彼らもまた、このオープニングとタイトルにテーマを仕掛けていたのだろうか。
闇に溶け込む衣装の色と、音を立てない裸足というスタイルに、観る者の感覚はすでに操られている。「鮮やかな突然」のための「秘やかな演出」。

見事な登場の仕方に目を奪われながら、暗闇の中で考えをめぐらす。舞台の上にはあのチラシのように、きっと目に見えない立方体があるのだと。前回までの「箱」とちがって、中に空間のない「Cube」では、外側、「面」が重要になるはず。それは90度刻みで時計回りに回転している。右・片桐。→左・片桐。→右・小林、左奥・後ろ向きの片桐。おそらく彼らは立方体の、背中合わせの「面」と「面」。最初に登場した片桐さんが「表」、小林さんは「裏」だろう・・と。

この公演で舞台に上がったネタは、全部で12本。どうも、6+6という構成になっているような気がする。立方体は「正6面体」ともいうから、立方体二つ分だ。しかも、前半のネタが裏返しの形で、後半に使われているため、裏立方体と表立方体のニュアンスも感じられる。公演全体を貫くテーマは、「裏がえり」だろうか?そんな予感が、この日、2つ目のコントでいっそう強くなった。

一連の「山のアトリエ」コントは、すべて片桐さんの自画像「憂いのオレ」パネルの前で繰り広げられる。オープニングでも想像がつくように、片桐さんと小林さんの関係は、ちょうど立方体の「表の面」と「裏の面」。裏面の小林さんは、この「正方形」のパネルの前で片桐さんと語り合ううち、彼の生き方に憧れるようになる。ちょうどサイコロの目の「面」であるかのようなパネルの支配力に影響され、自分とは正反対の「片桐(表面)」に「裏返り」たいと思わされたのかもしれない。

(ちなみに、この「アトリエコント」は四つに分割されているが(2.5.8.12)、コントの象徴でもある正方形のパネルは、やはり四つに分割しても正方形であり、「サイコロの目」的な支配力が失われることはない。)




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#2 「裏がえり」のための「5」をめぐる様々
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