現代片桐学概論・前期レポート




現代片桐学概論・前期レポート        通信教育科 独文専攻 黒井洋
1999.8.12




テーマ・ 21世紀における片桐学への展望
           あるいは、その知的枠組みについての一考察



はじめに

このレポートは、前期の講義をふまえた上で、「21世紀における片桐学への展望」というテーマのもとに、ドイツ文学専攻者であるわたくしの視点から、その知的枠組みと存在意義について考察する試みである。

本論の構成
  1. 片桐学の現在

  2. 「ラーメンズ」の表記と意味をめぐる論争

  3. ドイツ語的見地からの「ラーメンズ」

  4. ワークショップ・「箱」と理念としての「枠」

  5. 「箱」の中身 もしくは 片桐の「本質」

  6. まとめ




#1 片桐学の現在

片桐学の創始者である桐林仁博士(1921〜†1983)*1 によれば、片桐の発見は、人類史上、インドにおける「ゼロの発見」と並び称されるべきものであり、その存在意義については、従来の細分化された学問分野を越えて、トータルかつダイナミックな視点からの問題提起とその分析、考察が必要とされる。博士の指摘通り、その後の片桐学は、歴史、生物、経済、芸術、数学、物理学、法学、建築学など、あらゆる分野において発展し、最近十年では、インターネットを中心とする情報コミュニケーション学とクローン技術をはじめとする遺伝子工学に、その画期的な研究成果が見られるとの報告もある。

昨年開かれた、第7回「片桐学インターナショナルシンポジウム〜21世紀における片桐学への展望〜」において、現在、片桐学の最先端を行く片桐総合研究所の名称「ラーメンズ」*2 及び、片桐学の思想上の核とも見なされるべき桐林仁博士による術語「ラーメン」をめぐる様々な解釈が国内外の研究者によって検討されたが、それらはいずれも各学者個人の憶測の域を出ず、結論には至らなかった。

現在最も有力な説として、「中国発祥の食文化」を挙げる声が大きいが(後にふれる)、同研究機関設立者であり、現・代表の小林賢太郎氏は、恩師である桐林仁博士が「ラーメン」の定義を固定化することを嫌った姿勢を受け継ぎ、自身も、自らの片桐学における基本理念として、「人間一人一人の自主性・精神の自由を掲げる」とする立場から、シンポジウムにおいては敢えて発言を控え、論議の正誤を指摘することはなかった。

しかし、閉会の挨拶で氏は、「万人が万人なりの片桐像・片桐学をその都度構築すること、個人の想像力をなによりも重視するという点に、従来の学問とは明確に一線を画する片桐学の可能性と次世紀における存在意義を見いだすことができる」と語り、ますます自由な論議が交わされることを奨励した。(その後に、「しかし、最低限の方向性はありますが・・・」と付け加えることも忘れない。)

したがって、この論文では、小林賢太郎氏の基本理念にのっとり、「ラーメンズ」という名称の由来への、自由な態度による考察を一つの手引きとして、私なりに片桐学の知的枠組みを検討し、「片桐」の本質、ないしは、21世紀における片桐学の可能性について論を深めていきたい。







*1 片桐学創始者として国際的に名高い。1971年,1978年にそれぞれ、ノーベル平和賞、生理・医学賞の最終候補者に選ばれるが、自らそれを辞退。「生涯、一学者」としての高潔な精神を貫き、晩年は後継者の育成に専念した。主要論文は『人類と片桐 あるいはラーメン的意義について』(1968)(英訳は同年イリノイ州立大学出版局より、「Human and KATAGIRI or about the meaning of RA-MEN」 Devid. H. Smith氏の翻訳による)。

*2  現在、国際片桐学会において指導的存在となりつつある研究機関。正式名称は、”沖縄片桐大学付属片桐総合研究所「ラーメンズ」”。桐林博士の門下である沖縄片桐大学助教授・小林賢太郎氏らによって1996年に組織された。この「ラーメンズ」という名称に関して氏は、「自らの片桐学の理念を端的に表すもの」であり、出典は故・桐林仁博士の博士号学位取得論文(脚註1参照)であると示唆する以外は、明言を避けている。

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