やるせなす単独 「ラチの鍵」 98年5月6日 銀座小劇場

場所柄もよし。会場の雰囲気もよし。座席の感覚もよし。
すごいいろんな意味で楽しみだった今回のライブ。
ライブの前3日間、やるせなすの夢をみるくらい期待してしまっていたんだ、実は。
まずはオープニング、スライドが登場。
音楽も渋目で、中村くんの写真、石井くんの写真がかっこよく登場・・・なのに、なのに会場は大笑い。
かわいそうに・・・。他にも神谷町周辺で撮ったという数枚の写真が映し出される。
数人のアホファンのヤジを(歓声ではない。ヤジだよ、あれは)除けばとってもいい感じのオープニング。

「貧乏自慢」とでもタイトルをつけようかな。プリンがひとつ余っている給食の時間。2人の生徒がお互いどちらが
プリンを食うにふさわしい貧乏かを自慢する。設定が単純なのに2人のセリフ、芝居がうまくて飲み込まれて
その世界にすっぽり・・・という感じで包まれる。貧乏合戦の比較するセリフがなんかとてもリアルで
言葉で笑わしてくれるネタが好きな私としては、うれしいネタでした。

幕間。「スマイル」。ファーストフード店でスマイル注文をすると・・・という音ネタ。シンプルでどこか懐かしい。
「スネイクマンショー」とかそういう感じに近いかな。

「声優おじいさん」声優をやっていたというおじいさんと孫の会話。大山のぶ代と付き合ったこともあると豪語する
元声優のおじいちゃんの思い出話を、尊敬のまなざしで聞く孫。だが・・・しかし・・・。
石井康太、23歳にしておじいちゃん役とは・・・、はははっ。すごいなぁ。
いい意味で若さを感じさせないしっかりとした力に、ひたすら感心。

幕間。「女の子1」 女の子が主人の帰りを待って玄関で仁王立ち。そんなところの設定かな。

「同時刻」 六本木某スタジオと埼玉県越谷の民家で同時刻に行われている撮影会と泥棒稼業をシンクロさせた
ネタ。とても細かいところまで出来たネタなんだけど、その細かさに気がつく客は少なかったみたいですね・・・。残念。

幕間。「初めての告白」 石井くんが町中で何かをしている写真が映し出される。
それに対して、中村からひとことが入るというネタ。
「ジャージ出したほうがいいんじゃないですか?」「ハチ公前って・・・前すぎじゃないですか?」
「なんで、そのスポーツ選んだんですか?」「そのティッシュ固い」「おまえ、見逃されるよ」という具合に。
私、こういうネタ大好きなんですわ。1本ネタと幕間とのバランスもいいっ。

「乳母車」 一台の乳母車が置いてある。男が通り過ぎる。乳母車が気になっている様子。
別な男がまた通りかかる。この男は乳母車の赤ちゃんに向かって愛想を振りまき始める。
そこに、さっきの1人目の男が帰ってきて「先に見つけたんじゃ」と赤ちゃんあやし権の争奪戦となる。
ケンカに発展するが、乳母車の前を横切るときには、赤ちゃんをあやす顔になるというネタ。
あ〜、2人の演技力・・・感心さぜるを得ないです。
客が赤ちゃんの感覚も味わえるように計算(計算・・・かな?)されてるし。

幕間。「女の子2」 女の子が主人の帰りを待っている。が、ひげが生えてきている。

「心の声シリーズ 教師と生徒」 ナベプロライブで見たことがあるネタでしたが・・・
オチ的にナベプロライブのときの方がよかったような気がするようなしないような。
なぜに石井くんはこんなにジャージ姿が似合うのでしょう。
そしてなぜにこんなに野暮に着こなせるのでしょう(笑)。

幕間。「方程式」 方程式に人生の結婚から出産までをあてはめるという知性的なネタでした。

「電車」 普通の駅員・中村乗務員のファンという男が登場。中村乗務員に握手を求めたりサインを頼んだり。
すごくすごく、このネタ。期待してたんです。いろんな事情により。
ところが、やるせなすがこの日、客層を判断してか、間にわかりやすーい笑いを挟んだんですね。
状況的には仕方のないところなんでしょうが、ちょいともったいない感じもしました。
でも実際、そのわかりやすい笑いというのに(サインを書く際に誤って、顔にペンで書いてしまうというもの。)
涙が止まらないほど受けまくっていた私としては偉そうなこと言えないんですけど(笑)。
ものすごい真剣な顔して、色紙の角でペンのインクを拭い取ろうとする石井くんの表情にハマってしまって(笑)。
あ〜、またこのネタをもっともっと練り上げたものを見てみたいなぁ。

幕間。「女の子3」 女の子が主人の帰りを待っている。ひげは伸びまくり、そしてスカートも伸び切って・・・。

「床屋」 以前にライブでやったことのあるこのネタ。いきなり会場から「懐かしい〜」の声。
私は初めて見たので、なんかやるせない感じとか「あぁ、こういう感じもありだね」という感じで見ました。
フルコースの最後のお茶という感じで、私はこの終わり方、気に入りました。

「ラチの鍵」。拉致監禁のラチではなく、「埒があかない」の埒を開けるための鍵という意味なんですね。
このタイトルからしても。オープニングの雰囲気からしても。
そしてアンケート用紙にあった“やるせなすのイメージは?”の質問にしても。
まだつかみきれないけど「やるせなす」が見えてきたような感じがしたこのライブ・・・。
あぁ・・・、彼らの方向性と彼らのファン層のギャップが、やるせない銀座の夜でした。
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