ラーメンズ第12回公演「ATOM」 2003年1月9日、12日(マチネ) シアターサンモール

シアターサンモールは…チケット戦争と反比例して?という表現も変だけど、やはり落ち着きます。
ラーメンズに対して一番テンションが高かった頃(笑)、通いに通った劇場…んー、学生時代の部室のような感じ。
中学の部室がシアターDだとすると、シアターサンモールは高校の部室です。

【以下、ネタバレ色強し。公演をご覧でない方はここから先はご遠慮ください。あくまで復習用です。】




自分は完全で素晴らしい…と主張する男(片桐)の下、働く男(小林)。
働く男は、この自称完全なる男に憧れて、汗水流し寝る間も惜しんで働いている。
働く男の家庭事情や仕事の話を聞いて、負けじたくないがため何事にも「俺のほうがすごい!」を主張する男も
最後は自分のほうが不完全である…と折れるが…。

不健康・ワーカーホリックぶりを自慢する人物像を賢太郎さんが描く…というあたりに面白さを感じる。私、意地悪いですか?(笑)
でも、それを愚かしく描いているあたりにホッとしてみたり。


落語。舞台袖から小林登場。落語を始める。そこに片桐登場。「1人じゃん」「てぬぐいじゃん」
「扇子じゃん」と文句をつける。しかし、片桐も2人の登場人物を演じ始め、今度は小林が
「1人じゃん」と文句を付け始める…。

落語を率直に見たらこんなに楽しいネタになるのね、といった感じのコント。
仁さんが落語の口調になりスラリ流暢にしゃべりだすのが面白かった。あと足場崩れるハプニングあり。


ATOM。30年の眠りから目覚めた父(片桐)と、その父の目覚めを待ち続けた息子・アトム(小林)。
父は未来を見たいがため仮眠装置に入り眠っていた。30年ぶりの世界に未来を期待するが
2003年、父の期待していたような未来ではまだなかった。
「ははぁーん、レトロブームだな?」
と、現状を信じようともしない父だったが、次第に21世紀を理解し始める。
まだ結婚していない息子の恋人を「何星人だ?」
息子の仕事を当てると言い出し「時空管理局?重力コントロールセンター?」
息子が差し出した500円玉を玩具、といい2000円札には「いらねーっ!」
食事の心配をし、ボンカレーを食べるかと聞かれれば「昭和78年にもボンカレーはあるのか」
年号が変わったと聞いて驚く父に「マジで。」と説明すれば「(新しい年号は)マジで?卍伝?」
リニアモーターカーの走る時代かと思えば、京浜東北線…
21世紀の変化のなさに嘆く父。
そんな勝手な父に息子は「この時代に生きてこの時代に死ぬのがあんたの人生なんだ」と怒りをぶつけ、
これまでの30年間、父の愛を信じて寂しさを堪えてきたと打ち明ける。だがしかーし。やはり未来を見るため
再び眠りにつこうとする父のワガママ。ところが今度は仮死状態維持装置が壊れてしまい使えない。
とうとう諦めて翌日、一緒にまだ見たことのない父の田舎に帰ることを約束するアトムと父。
アトム「母さんまで、あと10年か…」

冷凍保存やタイムマシーンといった世界は、私の大好きな世界なので、このコントは好き。
賢太郎さんの書く“息子像”は、父親の態度に自分を抑えてまで頑張る良い子が多い気がするのは私だけ?


ギリジン〜路上ミュージシャン篇。舞台隅にコートを着て体育すわりで座っている男(小林)。
そこにギリジンが例の竹馬に乗って登場。竹馬を壁に立てかけ、1本だけ持つと、中央の椅子に座り
ギターのように竹馬を抱え歌い始める。
生活費は相変わらずギリギリだけれど、高い会費の日本竹馬協会には所属しているらしい(笑)。
カルチャーセンターに行って陶芸を習い始めたが、会費が高くて辞めた→ロクロはテレビの回転台に。
→コードが絡まって火花が散ってアパートも焼け、そして茶碗も焼けた。
男にお金をもらおうとするが、もらえないギリジン。
「お金じゃ買えない幸せはたくさんあるんだよ〜たとえばねぇ〜※△○◇※(ハミング)…」
ゲレンデで恋をしたりしていた様子のギリジン。英詞で謳い始めたと思えば「意味など知るものか」らしい。
軽く今の歌謡曲の歌詞なども批判したり(笑)。銀座で買った竹馬の見積もりは68万円(現金一括のみ)。
新宿歌舞伎町でOLと合コンをしたりもするらしい。
「テンテテーンテンテテーン、テレテテンッ、ギリギリジンっ♪」(戦艦ヤマトの終わりの雰囲気)

この脇で座る男をタカシと捉えるかどうか…難しい(笑)。そんな捉え方など自由だ。そうだ自由なのだ〜。

真夜中の体育館。東京の花屋で働く男・プリマ(小林)と、田舎の学校で理科の教師を勤めるジャック(片桐)。
2人は学生時代の同級生。学生時代のマドンナに会おうと久々に学校の体育館で再会し、卓球で遊びながら
ジャックがつくった焼き豚を食べつつ酒を酌み交わしている。
ジャックは昔から剥製などに興味があり理科の先生になった男、一方のプリマは都会で働いて、都会生活が
気に入っている様子。マドンナを迎えに行くついでに酒を買い足しに行くといってプリマの上着を借りて出て行くジャック。
最初はバスケなどをして時間をつぶしているが、そのうち夜の体育館に残されてだんだん恐怖心が芽生えてくるプリマ。
躓いたジャックのカバンからノートが出てきて、そこには豚、ニワトリ、ウサギ、人間…という文字が書き記されている。
「剥製?」との疑問が浮かび、まさかと打ち消してはみる…が、恐怖心に歯止めが利かない。歯止めがきかずに
ラップまではじめる(笑)。なかなか戻ってこないジャックの様子を見ようと外へのドアを開けると、そのそばの小屋で
ニワトリとうさぎが剥製になっている。焼き豚を食べるために用意されたナイフ、アリバイ工作をしてきたため誰も
自分の所在をしらないという現状、体育用具の古びて綿が飛び出したマット、卓球台という手術台…
剥製になるのは果たして自分なのか?

…怖いか?な。映像化したら面白そう。体育館と剥製という組み合わせだけでも、学校(舞台)の怪談としては十分よね。そこにピアノの
押し迫ったBGを入れて…カメラアングルは堤幸彦監督っぽく。どう?


“のす”や“わいよ〜”が口癖の大きいモノ好きの男(片桐)と、その友人らしき映画監督の男・トガシ(小林)。
大きいモノ好きの男は、トガシくんと一緒に大マンモス展、大女優原節子写真展などに出かけたがる。
「ただのマンモスでもデカのに、大マンモスとなると、とんでもないことになるわいよぉ〜」
それを渋るトガシに説得されると、主催者を訴えると息巻く男。そんな男を見ていて、じゃあ確認しにいこうと
誘いに乗ってあげるトガシ。すると次から次へと「大」のつくイベントに誘いだす男。
トガシ「だから、俺は忙しいっていってんだろ!」
男「トガシくん。忙しいという字は心をはさむとかく。」
トガシ「違うよ。」
部屋中のものに「のす」と書いてしまう男。
男「おまえのものは、俺のもののす」
トガシくんは映画を撮っている。次の作品のタイトルは「ATOM」。
カメラテストで男を撮ってみるトガシ。するとスラスラと「ATOM」のセリフを語る男。
トガシ「おまえって普通に喋れるんだなー」
男「ワザとだからねぇ」
今日にでも大女優原節子展を見に行きたいという男に、今日は天気がいいから…と却下するトガシ。
今度は男が撮影してみたいという。「大俺の大写真大展」を開きたいという。
30年ごとに航空写真をとって原寸大のパラパラ漫画の計画があるらしい。
トガシ「めくれる人いないよ」
夢破れた男はしたから青空を撮って、天気の悪い日には天井に張る、という。でもその写真は小さくてもいい。
男「だって雨の日のその写真はちょっと嘘のす。だからちっこいのす。」
トガシ「…どこで読んだ?」
男「暮らしの手帳!」
トガシも愛読者だった。
男「でも暮らしの手帳は読者とは言いません。クラッシャー!」
トガシ「おまえこれ、暮らしの手錠になってんぞ。そんなバイオレンスじゃねぇぞ」
男「あ、あれっ!」
男の声に窓を見上げると飛行機雲が。
男「あれ、飛行機じゃないのすねー」
トガシ「あぁ、アトムだ、空を飛べるヤツっていいなー。おまえも飛べるヤツだったらいいのにな。」
男「………」
トガシ「おいっ………。バッテリーあったかなぁ…」

機械っぽさを出すための伏線的扱いでの「のす」や「わいよー」だったのかしら。妙にそこばかり気になってしまったのだけど。
ひょっとして、「どうです?」「ねーのー」「のす。わいよー」の三兄弟三部作ってことだったの!?
今までも公演タイトルにかかる小道具を出してきたことはあったけれど、タイトルそのものがわかりやすい形で主体となるコントは…初?


エンディング。各名前紹介、一礼して終わり。

しかし、エンディング挨拶なしなんて許すまじだわいよー、な雰囲気で拍手なりやまず。
ちょっと心地よくないレベルの、執念を感じるほど続く拍手。んー、心地よくなかったなぁ。
エンディングトークで印象に残ったこと…は特になし。

「ATOM」。タイトル通りのコント(またはキーワード)が含まれている作品がいくつかあって、公演タイトルの
謎解きの楽しみは、今はもう必要なくなったのかな(というか、なくされたのかな?)という思い。
1月に見たときに正直「面白いのかわからない」という気持ちになった。面白い…じゃないなぁ。
よく出来た?かなぁ。気持ちは…悪くない。時代にあっていたし、さわやかだったり怖かったり(するという行為を)楽しめた。
ところが「んー」…なんと言っていいやら。語彙がないのがもどかしい。
今(4月になろうとしてる)冷静にこうして自分で一度飲み込んで言葉に出してみると眺めてみると
「ATOM」面白いなーと思う(笑)。…なんだったんだろう、あの感覚。

今回、エンディングはあったほうがいいだの、なかったほうがいいだの…と意見が分かれたが
えっと…記憶によると…ないのを一回、あったのを一回見たのかな?
あるならあるで嬉しいのだけれど、あの客席一体の「出てこーい」欲求での鳴り止まない拍手は
ちょっと正直言ってお腹にもたれちゃったかな。ないならないで、それは格好いい時もあると思うんだけどなぁ。
なんとなく今回のATOMは作品の色合いからして、パスッとなしのほうが十分に格好よかった気がするんだけど。
なにがなんでもデザートつけなきゃあかんの?みたいな(笑)。まぁ、あくまで私の好みの問題。ですけどね。
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